苦くも柔い恋




パーキングまで歩き、助手席へと誘導されて乗り込みめば当然だが千晃が運転席に乗り込んできて、それまで意識していなかった距離の近さに慄いた。

車の助手席に乗るなんて初めてでもないのに、心もちが全然違う。

内心落ち着かずドキドキとしていると、千晃がナビを設定しながら言ってきた。


「途中ドライブスルーで飲み物でも買って行くか」

「そ、そうだね」


千晃は車を発進させ、慣れた手つきでハンドルを操作する。

車が動き出して数十分、コーヒーショップで買ったカフェオレを受け取り高速に乗って流れ過ぎていく景色を見ていたが沈黙がそろそろ耐えられなくなってきた。


「か、カッコいい車だね」


気まずさのあまりに絞り出した適当な話題だったけれど嘘ではない。

黒のセダンはシンプルで洗練されたデザインで千晃の雰囲気ともよく合っていたし、外装も中も掃除が行き届いていて綺麗に整えられていることから大事にしている事が伺えた。

そういえば彼は昔から気に入ったものは大切に使う人だったなと、同時に思った。



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