苦くも柔い恋
「それはどーも」
「内装もシートとかレザーだし…結構高かったんじゃない?」
「まあそれなりに」
「だよね。いいなぁ…私も購入は検討してるんだけど、なかなか手が出せなくて」
「お前運転できんの」
「免許は一応持ってるよ」
「ペーパーかよ。恐ろし」
「ひど…」
確かに運動神経が運転技術にも影響するなんて話もあるけど、教習所で特別下手と言われなかったから大丈夫のはずだ。
「買うなら絶対軽にしろよ」
「もちろんだよ。こんな高い車買えるほど高給取りじゃないからね」
千晃がすごいんだよと言うと、別に…と前を向いたまま抑揚なく言った。
「他に欲しい物も無かったし、これといった趣味があったわけでもねえから…早めに買う目処が立っただけだ」
「そうなんだ」
昔からバスケ一筋だった千晃に車という趣味ができたのは初耳だ。
なんとなくそこで会話が途切れ互いに黙り込む。
きっと美琴ならここで上手く会話を広げていくのだろうが、車の知識が浅く語れる話が無い。
千晃はこんな自分と居て楽しいのだろうか。
そう思った時、不意に昨日のキスを思い出して唇に手を当てた。