苦くも柔い恋
そこから1時間と少し車を走らせて隣県にある大きな商業施設に到着し、総合案内板の前に立ち行きたいところはあるかと尋ねられたので、逆に聞き返した。
「千晃、ずっと運転して疲れたでしょ。どこかで少し休憩した方がいいんじゃない?」
「俺は大丈夫だ」
「でも…」
「和奏が言わないなら俺が行くところ決める」
いいな、と言い千晃は案内板から離れて歩いていく。
どこに行くんだろうと不思議に思いながら背を追いかけていたけれど、当然ながらお盆という時期もあっていかんせん人が多い。
180を超える身長を持つ千晃と154センチの和奏では身長差がある上、かつ脚の長さが違いすぎるせいで人混みの中を難なく進んでいく千晃の後ろを着いていくだけで大変だった。
そうしていると正面からベビーカーを押す家族連れがこちらに向かってきていて、当たらないよう避ければ別の人とぶつかってしまい、バランスを崩した。
わっと短い声を上げ、思わず目の前にあった千晃の背に手を伸ばして寄りかかる。
突然背中の服を掴まれたことで驚いて振り返った千晃と目が合い、気まずさでごめんと眉を垂らした。
何か文句が飛んでくるかなと思ったけれど、千晃は予想外な行動を取ってきた。
「…危ねえから手貸せ」
「う、うん」