苦くも柔い恋




伸ばした手を握られ、千晃の熱を直接感じて体が熱くなる。

こんな形で手繋ぎデートをするとは思っておらず、甘酸っぱい青春時代なんてとうに過ぎているのに照れてしまった。


そうして身体の一部が触れたまま進んでいき、レディース向けブランドの店が並ぶフロアまで移動して千晃の目的であろう場所に到着した。

その店がルームウェアで有名なブランドであったこともあり、和奏は着くなり一瞬固まった後じとりと千晃を見上げた。


「千晃…」

「忠告を守らなかったお前が悪い」


千晃に言われ部屋着を変えようとしたのだが、部屋着として使っているものはどれも生地がペラペラで一部が破れていたり、パンツの丈は短いものしか無く、それを出してみたところお前正気かみたいな目を向けられた。


だってしょうがないじゃないか。

大学の頃は初めての友人に舞い上がって交際費が最優先で衣類にお金を回すなんて後回しだったし、外行きの服を買えれば部屋着なんて誰が見る訳でもないからボロでもなんでも良かった。

今は学生時代よりは収入は安定しているが、染みついた癖はなかなか抜けないし、別に困っているわけでもないから欲しいと思わない限り買おうと思わなかった。

けれどそれは几帳面な千晃にとっては理解に苦しむ事らしく、なかなかに根に持たれているようだった。



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