苦くも柔い恋
——やっぱり、かっこいいなあ…
スマホを見る千晃の横顔にうっとりと見惚れてしまう。
タンクトップから伸びるバスケ部で鍛えられたしなやかな筋肉も、無造作に組まれた長い脚も精悍な顔立ちも何もかもが美しい。
高校に入学した頃は彼を見にクラスに女子が沸いたと聞くし、既に何人かにも告白を受けたらしい。
和奏はただそれを見ているだけだった。
ずっと側に居たにも関わらず、和奏にはその勇気が持てなかった。
そうしていると不意に千晃の視線が動き、力強い双眸がこちらの姿を捉えた。
「…お前、誰かも確認せずにドア開けてんじゃねえよ」
「え?」
何が言いたいのか分からず硬直すれば、千晃の眉間に皺が寄る。
「美琴が居ねえならドアホンでそう言えばよかっただろ」
「……。ごめん」