苦くも柔い恋
見た目通り髪質硬いんだ、なんて考えているとその手を掬われ頬に当てられた。
「…俺は、これからも和奏の側にいて良いのか」
「拒否しても居座ったくせに」
「それは悪い」
「ほんと今更。…でも、うん、いいよ。千晃とのデート楽しかったし」
「…。なあ、和奏」
「なに?」
「ありがとう」
千晃らしくない素直なお礼の言葉に拍子抜けして、少し驚いたしまった。
けれど耳まで真っ赤にしている姿を見てしまえばきっと精一杯に伝えてくれたんだろうと思い、なんだか微笑ましくなって何も言わず笑顔だけを返した。
「さ、食べよう。あとで夕食の買い出しも行かないといけないしね」
「…ああ」
ようやく千晃の表情が戻ったことで安心し、和奏は元の位置に移動するともう一度箸を持ち直した。