苦くも柔い恋


項垂れながらのそのそとベッドから這い上がる。
あと2日でだらけきった体と生活スタイルを元に戻さねば、後が辛いのは自分だ。

フローリングに足をつけて立ち上がり、千晃に向かって歩み寄る。


「ごめんね千晃…もしかしてベッドに運んでくれた?」

「寝るならベッド行けって言ったのにそのまま落ちたから仕方なく」

「ごめんて…。ん、あれ?」


改めてふわりと漂ってくるいい香りに思わず首を傾げた。


「え、まさか買い物も済ませてくれたの?」


千晃が何かを作ってくれている事は分かっていたけど、そもそも料理が出来るほどの食材なんて冷蔵庫に無かったはずだ。

思ったまま尋ねれば、千晃は視線を寄越すことなく「まあな」と言った。


「そんな、起こしてくれたら良かったのに」

「ヨダレ垂らして爆睡してたくせによく言う」

「え!うそ」


慌てて口元に手を当てると、千晃が含みのある笑顔を向けてきた。


「このままだとデブまっしぐらだな」

「…さいてー…」


むっと唇を突き出しながら立ち上がり、キッチン進む。


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