苦くも柔い恋



「何作ってるの?」

「親子丼」

「わあ、ここにきて炭水化物…」

「文句言うな、寝太郎」


卵の賞味期限が今日までなんだよ、と千晃は悪態をつきながら器によそう。

黄金色に輝くトロトロの親子丼は見るからに美味しそうだった。

文句言ってごめんなさいと軽く浮き足立ちながらテーブルまでそれを運べば、味噌汁と付け合わせのおひたしを持った千晃が寄ってきた。


「千晃って料理も得意だよね、すごく美味しそう」

「得意ってほどのレベルでもねえだろ」

「そんなことないよ、私じゃこんなに卵トロトロにならないもん」


いただきますと言って口に含めば、甘い玉ねぎとふんわりとした卵が舌を撫でる。

母の手伝いをしてきた事もあってそれなりにひと通りのものは作れるが、自分で作るより明らかに美味しい。

そういえば昔もこんな事があった気がするなと、遠い記憶を振り返る。


「親子丼といえばさ」


呟くように言えば、千晃の問いかけが返ってくる。


「家庭科の調理実習でも作ったことあったよね」

「ああ…そんな事もあったな」



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