苦くも柔い恋
中学の頃たまたま同じ班になって作ることになり、もうだいぶ朧げな記憶だがはっきり覚えている事がある。
「結局あの時、ほとんど千晃がやっちゃったんだっけ」
「他の奴らがチンタラやっててたから腹立ったんだよ」
「うーん…ちょっと違うと思うけど…」
側から見れば、クラスの女子達は千晃の班から外れた子は明らかにやる気を無くしていたし、同じ班になれた子は彼へ何かしらのアプローチをかけるのに忙しかったように思う。
「同じ班の子が色々話しかけてたのに、千晃が手動かせなんて一蹴するからすごく居た堪れなかったよ」
「覚えてねえ」
「…そういえば千晃って、あんまり女の子と話してる印象無いね」
思い返せばいつも周りにいたのは男子ばかりだったし、よく話す女子といえば美琴くらいだった。
だからこそ勘違いしてしまったのだけど。
「興味無かったからな」
「あんなにモテてたのに?遊んでやろうとか思わなかったの?」
「それをお前が言うのかよ」
千晃に言われて確かに…と思った。
そんな事がもしあり得ていたら耐えられなかったはずなのに、図太くなったものだ。
ほんの冗談のつもりだったけど意地の悪い質問をしてしまったなと反省していると、千晃はすました顔で食事を続けていた。