苦くも柔い恋


「引いたかよ」


千晃は和奏を見つめたまま、真顔で問うた。
それを聞いた和奏は少しの沈黙の後、静かに首を振った。


「それなら此処に来た時点でとっくに引いてるよ」


どうやって見つけたの。
そう聞くと千晃は明らかに目を逸らした。


「言わねー」

「どうして?」

「これ以上引かれたら嫌だから言わねえ」

「…。どんな手使ったの」

「非合法なやり方はしてねえよ」


当たり前だ怖いことを言うな。

そんな意味も込めた視線を送るが本人は至ってどこ吹く風。

おまけにサッサと食べろよなんて素っ気なく言うものだからこれはどうあっても話さないだろうなと諦めることにした。


その後食事を終え、交代でシャワーを終えた頃にはすっかり長く居座った太陽がすっかりと沈みきった頃だった。



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