苦くも柔い恋
普段ならいい具合に眠気が顔を出す時間だが、昼寝をしてしまったせいですっかり目が冴えてしまっていて、見もしないテレビを眺めながらベッドの上でぼんやりしていた。
洗面所で髪を乾かし終えた千晃が戻ってくると、ペットボトルの水を手に持ちベッド脇に立った。
「寝ないのか」
「うーん…お昼寝しすぎちゃったみたいで」
子供みたいだよねと笑い返せば、千晃は水をテーブルに置いて聞いてきた。
「…そっち、行っていいか」
千晃の言葉にドクリと心臓が音を鳴らす。
これは合図だ。
キスをするから心の準備をしろとういう、合図。
「…うん」
ここ数日毎日の事なのに未だ慣れず、視線を落としながらそう言った。
和奏の返事を聞くと千晃はテレビを消し、おもむろにベッドに身を乗り出し俯いた和奏の顎を持ち上げ視線を交わす。
そのまま顔を寄せれば唇は重なり合い、やがて艶めかしい水音を立て始めた。
くちゅくちゅといやらしい音に一層恥ずかしさが込み上げるが、それを上回る心地よさで頭がゆるやかに鈍っていく。