苦くも柔い恋


他に比べようがないが、千晃はキスが上手いと思う。
こんなところまで器用さを発揮しなくていいのに、そう思っていると千晃はこちらに向かって体重を乗せ、そのまま押し倒してきた。


「んっ…、…ちあ、き…?」


視界いっぱいに広がる千晃の端正な顔と見慣れた天井に、途端に思考が混乱へと変わる。

何故こんなことに、そう思ったところで千晃が声を発した。


「…ずっと聞こうか迷ってたが、もう限界だ。…なあ、和奏」

「……」

「お前、本当は俺の事どう思ってるんだ」


千晃の手が首筋から下へと降りていき、鎖骨を撫でる。


「…っ」

「こんな事されても嫌がる素振りも見せねえ。分かってんのか、嫌いな男に組み伏せられてるんだぞ」

「…分かってるよ」

「なら…っ」


千晃の顔が苦痛に歪み、そして首元に埋まる。


「嫌なら拒絶しろよ…じゃなきゃ止まらなくなる」


もう傷つけたくない、そう千晃は言った。
苦しみが伝わってくるような声だった。


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