苦くも柔い恋

——もう、観念するしかないのかもしれない


今や千晃を苦しめているのは和奏の方だ。

応えてくれるかも分からない恋心に苛まれ、それでもなお気持ちを伝え続けるのは容易な覚悟ではなかっただろう。

まして、かつては殆ど会話すら出来なかった相手にだ。

ずっと思わせぶりな態度を続けてきた自覚はある。
だからもう、いい加減に彼を赦し、受け入れる覚悟を決めなければ。


「…嫌じゃ、ない」


顔の横に埋まる千晃にすり寄せるように言えば、千晃が勢いよく身体を起こした。


「嫌じゃないよ。…千晃がしてくれること、全部嬉しい」

「…和奏…？」


揺れる瞳に、どうしようもない思いが込み上げてくる。



「…好きだよ、千晃」