苦くも柔い恋
「先に食べててくれて良かったのに」
「和奏が食いたいものがあるかと思って」
「私…なんでもいいのに」
「仕事だったお前優先。それに酒はもらってた」
メニュー表を手渡され、間も無くして寄ってきた店員に飲み物はと聞かれた。
「じゃあ、ファジーネーブルで」
続けて何品か注文をし、再び2人きりになると千晃が揶揄うように言った。
「ファジーネーブルて、大学生かよ」
「そうなんだけど、一杯目に強いの入れたらすぐに回りそうで」
「なに、お前呑めんの」
「弱くはないよ」
潰れたことないし、そう言えば千晃は眉を寄せた。
「当たり前だ。送り狼なんて言葉もあるんだ、過信するな」
「千晃は私のこと過大評価し過ぎなんだよ」
「はあ?」
千晃はハイボールのジョッキを置き、背もたれに腕をかけながら眉を寄せる。
「私なんかに好きって言ってくれたの、千晃だけだもん」
「…大学で彼氏は、」
「いないよ、そんなの」
そう言ったところで飲み物を持ってきてくれた店員に軽くお礼を言ってひと口飲んだ。