苦くも柔い恋
「和奏さ、見てみぬフリしてるけどそれ多分お姉さんの策略だよ」
「……」
「和奏と彼が付き合ってるって知っててそんなことしたんでしょ?今だって避けられてるのにそんな噂流してさ。就職まで付きまとうって相当だからね」
「そう、だけど…」
痛いところをつかれ押し黙る。
薄々気づいてはいたのだ。美琴の異様なまでの千晃への執着を。
交際を知っていながら嘘までついて千晃を彼氏だと言ったのも、今も周りを味方に付けて何かを企んでいるであろう事も。
「和奏、お姉さんに何かしたの?」
「そんな記憶は無いんだけど…」
美琴とあの時以外で何かを揉めた事は無い。
いつもこちらを下に見ていることは知っていたけれど、それに突っかかっていった事はないし仲は良かったはずだ。
まさか気付かないうちに、美琴を傷つける何かをしてしまったのだろうか。
「…まあ、お姉さんが何を考えてるかは分からないけどさ」
桜は何杯目かのハイボールを豪快に飲み干し、ダン!と机に叩きつけた。