苦くも柔い恋
「絶対負けんなよ!和奏!」
「ど、どうしたの急に」
「私そういう腹黒いの嫌いなの!それに和奏はこんなに優しくていい子なのに…なんでそうやって傷つけようとするのかなぁ…」
前言撤回。
正気に戻ったと思っていた桜はやはり酔っ払いだった。
「桜、飲み過ぎだよ…今日はもう水にしておこう?」
「うぇ〜ん…和奏ぁ」
「はいはい」
絡み上戸を越えると泣き上戸になるのかこの女は。
桜の気持ちを聞き嬉しさを感じつつも、どこか胸に引っ掛かりを覚えた。
——本当に、何も無いといいんだけど…
先日の千晃の同僚の女の視線が頭から離れない。
おそらく彼女の言葉の続きは美琴が千晃を好きだと言いたかったのだろう。
負けるなと言われたけれど具体的にどうするのか。そもそも美琴には何も勝てる気がしない。
そんな不安を抱きながらスヤスヤと眠りについた桜を布団まで運び、その後しばらく晩酌を続けた。