苦くも柔い恋


ぐっと手に力を込めて、強く言い返した。


「そんなことしてない。美琴は何もかも持ってたじゃない、どうしてそんな事言うの」

「何もかも…?」


ピクリと美琴の眉が動き、鋭い視線が射抜いた。


「あんたに私の何が分かるっていうの…!」


机を叩き、美琴は怒鳴った。
こんなに激しい感情を露わにする姉を見た事が無くて、思わず硬直した。

お店の奥さんが心配して顔を出してくれたけど、大丈夫ですと言って謝罪をして下がってもらった。

美琴は黙って座り込むと、そのまま口を開かなくなった。
そしてしばらくの静寂の後、ぽつりとつぶやく。


「和奏、あのね」


その声は泣きそうにも聞こえた。


「私、あんたのこと大嫌い」


初めて見る美琴の涙だった。
いつも自信に満ち溢れ、誰よりも輝いていた美琴はそこにはいなかった。

そこにいたのは絶望に色を染め、静かに泣いてる女の子だった。


< 219 / 267 >

この作品をシェア

pagetop