苦くも柔い恋
千晃はまた少し変わった。
なんだか憑き物が落ちたような、以前のどこか切羽詰まった感じがなくなった気がする。
あまりに見つめすぎていたのか、千晃がこちらに目を向けた。
「なんだよ」
「千晃…表情が柔らかくなったね。前より余裕のある顔してる。何かあったの?」
「何も。…ただ、押し付けるだけが愛じゃないって気付いただけ」
愛。千晃の口から到底出るとは思えない言葉に思わず吹き出した。
「なにそれ。もう別人じゃない、誰かと中身入れ替わっちゃった?」
「ほんと図々しくなったな、お前」
言葉とは裏腹に千晃の表情はとても優しい。
それを見て高鳴る胸に、改めてどんな顔をする千晃でも好きなんだと実感する。