苦くも柔い恋
「…千晃と美琴が似てるなら、私と千晃だって似てるよ」
「そうか?」
「うん。頑固で泣き虫。…あとは、お互いが大好きなところ」
千晃の目が一瞬開き、そして微笑んだ。
「そうだな。けど、ひとつ訂正」
「え?」
繋いでいた手が解け、そして絡まる。
触れた指先は柔らかくも温かい。
「大好きなのはお互い"だけ"、な」
そう言った千晃の笑顔はかつて見た子供の頃のように無邪気で、晴れやかだった。
そうだね。その一言を返し少し日の短くなった道のりをゆっくりと歩いた。