苦くも柔い恋
「おっ、来たか!いらっしゃい〜!」
千晃達に声をかけたのは同じクラスのバスケ部員だった。
他クラスの生徒たちは内装を興味津々に見回しながら明るい声を上げた。
「結構本格的なのな!畳まで用意したのかよ」
「コレフェイクなんだよ。すげえだろ」
「へー!着物も良い感じじゃん。お前はどうでもいいから可愛い女の子呼べよ」
「うわ、ひっでぇ!」
他愛のない話で盛り上がる面々に自然と視線が集中する。
当然その輪に見目の良い千晃がいるからなのだろうが、当の本人は一言も話さずむっつりとしたまま室内を見渡している。
丁度接客中だった和奏はそれを横目で確認するだけだったが、注文を取り終えたところでそのバスケ部員に呼ばれた。
「橋本さん!こっちいい?」
視線を向ければ数名の男子生徒がこちらに目を向けていて、当然千晃もそうだった。
一瞬目が合った気がしたけれどすぐに逸らし、和奏を呼んだクラスメイトへと声をかける。