苦くも柔い恋



確かに、飲み慣れない人にとっては味の違いは分かり辛いかもしれないがそれにしたってあんまりな言い方である。

同じような事を思ったのだろう、周りの男子達も非難の言葉を漏らしていた。


「えぇ〜千晃、お前冷たくねえ?この子美琴の妹だろ、なら幼馴染なんじゃねえの」

「……」


的確に和奏の地雷を踏み抜く様にはもはや言葉が出なかった。

何を返すのかと思いきや、千晃はそれを華麗に無視したまま残りの抹茶を飲み干した。

そしてひとこと。


「別に」


予想通りといえば予想通りなのだが、それでも胸は痛んだ。

彼女だと紹介するなんてこれっぽっちも期待はしていなかったけれど、せめて幼馴染であることくらい肯定するとかなんとか言ってよ、と泣きそうになったがそんな事この場で言えるはずが無かった。



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