苦くも柔い恋
和奏は感情を押し殺しすました顔で残りの数人の抹茶を用意し、ごゆっくりと言って立ち上がってその場を去り、お手洗いに行くと言って教室を離れた。
そしてそこで、またも見たくもない顔と出会ってしまう。
「あ、和奏〜!」
派手な女生徒数人に囲まれた美琴は和奏を見つるなり声を上げ、真っ直ぐに向かってくる。
「着物姿可愛いじゃん!よく似合ってる」
「…ありがとう」
「てか千晃知らない?探してるんだけど見つからないんだよね〜」
「えっと、」
千晃に会ったことを伝えようとした、その言葉は美琴によって遮られた。
「も〜!一緒に回る約束してたのにぃ」
ガン!と頭を鈍器で殴られた感覚がした。
目の前が緩やかに暗くなり、足元が覚束なくなってくる。
「…千晃なら、」
「ん?」
か細く呟いた唇に、美琴の顔が寄せられる。
「さっき、うちのクラスに来てたよ」
メイクなんてほとんどしていないのに、肌荒れを知らないきめ細やかな美しい肌に桜色の頬、赤く薄い唇は間近で見るとますます美琴の美しさを感じさせた。