苦くも柔い恋
「そうなの?ありがとう〜行ってみる!」
美琴はパッと離れると明るく言い、周りの女子を連れて和奏が進んできた道を歩いて行った。
「…っ」
一緒に回る約束なんて、初めて聞いた。
まあそうだよね。
千晃と美琴は公式カップルのようなものだから。
自分と千晃が並んでいる姿なんて、それこそ異質過ぎる。
緩やかな絶望感は次第に虚無へと変わり、思考が鈍り力が抜けていった。
その後お手洗いを済ませてクラスへ戻ればバスケ部員達に囲まれた美琴が居て、室内中の注目が集まっていた。
和奏にとってはこれが日常だ。
今更何も傷つく事なんてない。
…そのはず、なのだ。
その後間も無くして美琴を探しに来たミスコン実行委員に彼女は連れられていき、一行は一緒に出て行った。
和奏はそれを見送ることはせず、裏に回り茶器の整理と準備を行っていた。
心は決めてあったはずなのに、どうしても重くなる胸をどう誤魔化せばいいか分からなかった。