苦くも柔い恋


開始からぶっ通しで店に出ていた和奏が休憩に入ったのはミスコンが始まり店の来店が減った頃だった。

それに乗じてクラスの面々も数名が会場へと向かったが、和奏は別の場所へと赴いた。


出来るだけ人気のない場所へと向かった先は、2年生に休憩室として割り当てられた空き教室だった。

けれど文化祭時、そこを使用されることはほぼない。

1年に一度のたった1日の文化祭なのだ、当然色々なものを見て回りたいし今は目玉であるミスコンが開催されているので尚更。

和奏は窓際の適当な席に腰を下ろし、ほっとひと息つきながら外をぼんやりと眺めた。

文化祭が終わった後は修学旅行、年が明ければすぐに3年に入りあっという間に受験生だ。


「…もう少し、楽しめると思ったんだけどな」


思えば昨年の夏が人生で一番のピークだった。

まさかこんなにも早く下降するなんて思いもよらなかったけれど。

しようもない事に思いを馳せているとお腹がぐう、と音を立ててそういえば昼を摂っていなかった事を思い出した。


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