苦くも柔い恋
気付いてしまうと空腹感が一気に込み上げてきたけれど、足はパンパンだし何より疲労も相まって気力が起きない。
もう夕飯までこのままでいいやと思ったところで、教室のドアが開く音がした。
こんな時にここにくる奇特な人間が自分以外にも居るのだなと視線すら寄越さなかったけれど、足音が真っ直ぐこちらに向かってくるので思わずそちらに顔を向けた。
「え…」
間髪入れずに自分の座る席に何かが音を立てて置かれ、それを持って来た人物がぶっきらぼうに言い放つ。
「やる」
そう言った千晃は、相変わらずの不機嫌そうな面持ちで立っていた。
「…なに?これ」
突然の出来事に何も言葉が浮かばず、そんな事しか言えなかった。
「昼食ってないだろ。好きなもの取れ」
「…えっ、と…」
千晃の圧に押され、袋の中を見ればこの文化祭で購入したであろう色々な食べ物が入っていた。
やると言われた以上何かしらは貰った方が良いだろうと思って、おずおずとたこ焼きの箱を貰った。
「…、じゃあこれを…」
「それだけでいいのかよ」
「う、うん。すぐに片付けに戻らないといけないし…」
そう言うとチッと舌打ちをされた。