苦くも柔い恋
何故そんな事をされねばならないのか全くもって納得いかないが、まあいい。
せっかく会えたのだ。
この機会に別れ話をしてしまおう。
そう思い話を切り出そうと口を開いた時だった。
「…それ」
「え?」
千晃の言うそれが分からず手元を見るも、今しがた受け取ったたこ焼き以外何も変なところはない。
何か顔についているのだろうかと思ったけれど、鏡が無いから分からない。
そんな風に少し迷っていると、千晃は耳に届くギリギリの声量で言った。
「その服…悪くない」
聞こえた言葉が信じられず反応を忘れて固まっていると、千晃はそのまま背を向けて勢いよく出て行ってしまった。