苦くも柔い恋
「試合序盤で点取られちゃって皆んなの士気が下がった時、千晃がフリースローを決めて流れが変わったでしょ」
「…分かんのかよ」
「確かに私は素人だけど…試合の空気を感じることくらいは出来るよ」
圧倒的な強さの前に誰もが萎縮していたにもかかわらず、その緊迫感やプレッシャーに押し潰されることなく千晃がフリースローを決めた途端、チームに覇気が戻ったのを感じた。
ああこれがキャプテンの背負う重圧で、あるべき姿なのだとあの瞬間は感動で涙が出た。
「あの瞬間の千晃、本当にかっこ良かった。最後まで感動しっぱなしだったよ」
相変わらず千晃は何も言わない。
落ち込んでいる彼を少しでも元気づけてあげればと思ったけれど、あまり意味は無かったかもしれない。
そもそも、なぜ美琴でなく自分がこうして呼び出されたのだろうか。
バスケのことならばど素人の自分なんかよりマネージャーである彼女の方がルールも何もかもよく分かっているし、適任じゃないだろうか。
それに…千晃だって、気を許せる美琴の方が一緒にいて元気になれるに決まってる。
それなのに、どうして。