苦くも柔い恋




ようやく嗚咽が落ち着いた頃、何があったのだと尋ねられ和奏はこれまでの事を全て話した。

最初は眉を下げて聞き入るだけの母だったが、涙を流し続けながら話をする和奏の言葉を聞くにつれ次第に母の瞳からも涙が溢れた。


「ごめんね和奏…気づいてあげられなくてごめんね…!」


母は何も悪くないのにひたすらに謝ってきた。

それでも今は母を思いやれる余裕が無かった。

またどうしようもない感情が込み上げてきて、ひたすらに母の腕の中で泣き続けて和奏は疲れて眠ってしまった。


間も無くして意識が浮上すれば自室で、机の上に置かれた合格発表の画面が先程の出来事が現実である事を物語っていた。

そうしてしばらく天井を見つめながら、和奏はある決心を固めた。


——もう二度と、2人には会わない


心が固まったせいか、もう涙は流れなかった。




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