苦くも柔い恋
「和奏のところは夏休みはどう?」
「夏期講習が始まるからそればっかり。桜は?」
「私もおんなじ。授業は無くても仕事はあるし、部活があるから休みなんて無いよ〜」
「中学の教師は大変だね」
「ほんとそう!思春期だし生意気な子も多いしさぁ」
文句を言われながら手渡された梅酒に口をつけ、大変そうだねと愛想笑いをした。
桜と同じく教育学部を出た和奏も一応教員免許は持っているが、当時から人手不足を嘆いていた塾長に辞めてほしくないなんて言われて絆され、最終的に悩んで今の塾に就職を決めた。
桜の苦労話を聞いていると、やっぱり今の所にしておいて良かったかも、なんて狡い考えを思い浮かべた。
「てかさあ〜和奏聞いて!今彼氏とヤバいの!」
桜がくだを巻きそうな気配を出してきたので席選びを失敗したかも、と直感で感じた。
「えっと…彼氏って、前まで同じ学校だった人だっけ」
「そうだよ!今年から学校変わったんだけど忙し過ぎてデートも殆どできなくてさあ〜。それで今ケンカ中。なんか続けられる自信無くなってて…」
「そう…」
「この仕事してるとさぁ、休日も何かと学校に出る事あるし距離が離れると別れる確率がダンチだよね。もーどうしろって感じだよ」
「……」
「和奏?」
「…デートしてくれるだけマシじゃないかな…」
「え?」