冷徹ドクターは初恋相手を離さない
第1話
『お母さんの最後のお願いです。詩織の叶えたい夢を叶えてね──』
待って。待ってお母さん。
どんどん遠ざかっていくお母さんの背中を追いかけて走る私。私はお母さんに追いつきたくて必死に走る。それでも追いつくどころか、どんどん距離が離れていく。
息が切れることもなくて、無我夢中で走れた。ぼわんと変に頭の中で響く自分の声と、重力を感じない身体に違和感を感じることはなかった。
待って。待ってよ、お母さん。私をひとりにしないで──
「……あ」
目尻から耳元に流れる涙を手で拭う。
たまにこんな夢を見る。もう慣れたけれど、寂しい気持ちになってしまう時だってある。
身体を横にしたまま手を伸ばしてベッドの近くにある窓のカーテンを開けると、雲ひとつない青空が広がっていて清々しい朝に、既に気分がよくなっている。
「んん、なんか疲れた……」
途中から夢の世界であることはわかっていた。
それでも、今はもうこの世にいない私の母とまた夢の中であったとしても、話せるのなら話したい。
そんな日だってある。
きっと今回夢に母が現れたのは、明日から看護学生として最後の実習である統合実習が始まるからだろうか。
統合実習というのは、最終学年で履修する看護学生にとって集大成となる実習で、これまでの受け持ち患者は一人であったのに対し、統合実習では二人になる。その分、勉強量も増えるし優先順位などを考えながら援助計画も考えなくてはいけないから大変そうだ。
うちの学校では例年、5月下旬から6月初旬にかけて実習が行われている。
待って。待ってお母さん。
どんどん遠ざかっていくお母さんの背中を追いかけて走る私。私はお母さんに追いつきたくて必死に走る。それでも追いつくどころか、どんどん距離が離れていく。
息が切れることもなくて、無我夢中で走れた。ぼわんと変に頭の中で響く自分の声と、重力を感じない身体に違和感を感じることはなかった。
待って。待ってよ、お母さん。私をひとりにしないで──
「……あ」
目尻から耳元に流れる涙を手で拭う。
たまにこんな夢を見る。もう慣れたけれど、寂しい気持ちになってしまう時だってある。
身体を横にしたまま手を伸ばしてベッドの近くにある窓のカーテンを開けると、雲ひとつない青空が広がっていて清々しい朝に、既に気分がよくなっている。
「んん、なんか疲れた……」
途中から夢の世界であることはわかっていた。
それでも、今はもうこの世にいない私の母とまた夢の中であったとしても、話せるのなら話したい。
そんな日だってある。
きっと今回夢に母が現れたのは、明日から看護学生として最後の実習である統合実習が始まるからだろうか。
統合実習というのは、最終学年で履修する看護学生にとって集大成となる実習で、これまでの受け持ち患者は一人であったのに対し、統合実習では二人になる。その分、勉強量も増えるし優先順位などを考えながら援助計画も考えなくてはいけないから大変そうだ。
うちの学校では例年、5月下旬から6月初旬にかけて実習が行われている。
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