エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました
 夜の銀座の街で、ヨーロピアンテイストの外観が華やかなショップは宝石箱のように煌めいている。
 公式サイトで商品を眺めたことはあっても、実際に店内に足を踏み入れるのは初めてだった。精巧な造りのアクセサリーはどれも素敵だけど、私の経済力からすると気軽に買えないお値段だしね。

 にこやかな笑顔の女性店員さんが、「御堂様、いらっしゃいませ。お待ちいたしておりました」と頭を下げる。丁寧な対応に、心がふわふわとくすぐったくなる。
 私も元々はAngeの店舗で販売の仕事をしていたけれど、もっとカジュアルな接客を求められていた。商品や客層の違いによって、お店の雰囲気作りは変わってくる。

「わぁ、綺麗」

 大きなショーケースに近付いた私の口から、感嘆の声が漏れた。ケースの中には様々なアクセサリーが整然とディスプレイされている。照明の光を受けてキラキラと輝くさまにうっとりしてしまう。

「本日はどういった物をお探しですか?」

 店員さんに聞かれて、「えっと」と口ごもる。
 自分がずっと身に着けたいと思うアクセサリー。どんな物が良いのか、イメージが浮かばない。
 すると、私の隣に立つ御堂課長が微笑んで言った。

「彼女へのプレゼントを。具体的には決まっていないから、彼女が迷うことがあればアドバイスが欲しい」

 私は「プレゼント!?」と声を上げそうになるのを必死で堪えた。
 彼女へのプレゼントって、何だか、私と御堂課長が恋人同士みたいなシチュエーションじゃない!?
 いやいや、勘違いしてはダメよ、乃愛。
 きっと、私が選びやすいように嘘を付いてくれたんだろう。プレゼントといっても、別に購入するわけじゃないもんね。お店には悪いけど。
< 19 / 108 >

この作品をシェア

pagetop