エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました
第一章

新たな上司は次期社長!?

 柔らかい風が東京の街を吹き抜ける四月一日。
 私、藤島(ふじしま)乃愛(のあ)は、やる気に満ち溢れながら会社までの道を歩いていた。
 入社式に向かうのだろう、フレッシャーズスーツに身を包んだ新社会人の群れを微笑ましく眺める。
 私も今日から社会人三年目。仕事には慣れたけど、もっと成長したいな。

 春の陽気を含んだ風が、私の髪を優しく揺らす。この前の休日に美容室でストレートパーマをかけたばかりの、ブラウンのセミロングヘア。
 トレンチコートの下は、淡いラベンダー色のブラウスに白のフレアスカートを合わせて春らしくしてみた。

 背が低くて童顔なのを気にしているから、少しでも大人っぽい見た目になるように心がけている。
 だけど、クールな印象のメイクは同期の沙希(さき)に「全然似合わない」って言われちゃったから、ピンク系のナチュラルメイクに戻したんだけどね……。

 ヒールパンプスを鳴らして慌ただしい朝の通勤路を歩いていると、私の勤める会社のビルが見えてきた。

 国内アパレル大手のMIDOUグループ。
 レディースファッションを中心に、メンズ・キッズ・ベビー服まで展開し、他にもバッグや靴・アクセサリーなどの服飾雑貨、スポーツウェアやインテリア用品のブランドも幅広く手掛けている。

 MIDOUグループの本社ビルは、丸の内の街並みに溶け込む近代的なデザインだ。
 エントランスに流れ込む人の波からちょっと離れると、私は首に掛けていたネックレスのトップをブラウスの中から取り出した。
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