エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました
 打ち合わせは順調に終わり、響子さんに別れの挨拶をしてから店を後にしようとした、その時。

「これ、お洒落じゃない? シンプルで」

「俺、隣のデザインの方が好きかも」

 二十歳くらいのカップルが、店頭にディスプレイされたペアネックレスを眺めながら会話しているのを見つけた。

「こんにちは。良かったら店内も見ていってくださいね」

 元店員の習性で、ふたりに声を掛ける私。

「真ん中の商品は、Angeの一番人気ですよ」

 そう説明すると、男性が少し嫌そうな顔をした。

「う〜ん、俺、周りと被るのはちょっと……」

 さっきの会話といい、自分の好みをしっかり持っている感じだな。

「それでしたら、セミオーダーはいかがでしょう。お好きなチャームとチェーンを組み合わせて、おふたりだけのペアアクセサリーが作れますよ」

 セミオーダーのコーナーを手で指し示すと、ふたりとも興味が湧いたみたい。サンプルを展示したケースを覗き込んでいる。
 私はコーナーで控えていた店員さんに後を引き継いだ。

「チャームは揃えて、石だけ変えるのもアリだな」

「じゃあ、誕生石にしようよ」

 仲良く話すふたりを微笑ましく眺めていると、新たなお客様が店にやって来た。

「Excuse me?」

 私に英語で話し掛けてきたのは、海外からの観光客と思しき家族連れ。
 お父さんらしき男性が、身振り手振りを交えながら何かを聞いてきたのだけど、どうしよう、全然分かんないよ〜!!

 すると、私たちの間に御堂課長が入ってきて、流暢な英語で代わりに対応してくれた。話を聞きながら手帳とペンを取り出し、ショーケースを見て紙に何かを書き付ける。

「こちらの品番と点数の在庫を確認してください。ご家族お揃いで着けたいそうです」

 そう言って、御堂課長は響子さんにメモの紙を渡した。点数が多いから、私も手伝おう。
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