エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました
 征士さんが連れて行ってくれたのは、恵比寿にある隠れ家的なフレンチレストランだった。小ぢんまりとした、だけど居心地の良いモダンなお店は、聞けば一日五組限定だという。

「素敵なインテリアですね。こういう落ち着いた雰囲気のお店は、初めて来ました」

 個室に通され、食前酒のシャンパンを飲みながら、私は素直な感想を伝えた。自分がよく行く飲食店は、もっと賑やかで値段も手頃なところばかりだ。
 間接照明の明かりが灯る、ムードたっぷりの店内。大人びた雰囲気に緊張するけれど、今まで知らなかった世界に来られてワクワクする気持ちもある。

「気に入ってもらえて良かった。ここは料理も美味いんだ。盛り付けも芸術的だから、君の感性に響くと思う」

「それは楽しみです」

 微笑んだ征士さんが、私の手元に視線を落とす。

「ブレスレット、着けてくれたんだな」

 左手首に煌めくのは、以前の店舗視察で征士さんが買ってくれたブレスレットだ。ロードライトガーネットの深みのあるピンクが、上質な空間によく映えている。

「はい。身に着けるのが勿体なくて、今日が初めてなんですけど」

「指輪も着けているのか?」

「あ、これはお守りのような物なので……不快でしたか?」

 ネックレスのチェーンを引っ張り、服の中からピンクサファイアの指輪を取り出しながら聞くと、征士さんは首を傾げた。

「不快? 何がだ?」

「えっと、昔の話とはいえ、他の男性から貰った物を着けているのはどうなのかなと思って」

 中学生の時の話だし、指輪をくれたお兄さんは恋人でも何でもないけれど……。
 私の説明を聞くと、征士さんはクスクスと面白そうに笑った。

「何だ、そういうことか。その指輪については、君から思い出話を聞いているからな。嫉妬なんてするわけがないさ」

「そうですよね」

 征士さんがヤキモチを焼くなんて、全く想像出来ないものね。
 彼は優しい瞳と声で言った。

「大切な物なんだろう? ずっと着けているといい」

「はい」

 微笑み合ったところで、個室のドアがノックされる音がした。料理が運ばれてきたみたい。
 入室したウェイターが、私達の前に飲み物と前菜を置いた。

「わぁ、綺麗……!」

 白のプレートにバランス良く盛り付けられた前菜は、一品一品の彩りが鮮やかで目を奪われる。

「さあ、頂こうか。君も楽しんで」

 そう言って笑顔を見せる征士さんと共に、私は優雅で美味しい時間を満喫した。
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