エリート御曹司の溺愛に甘く蕩かされました
「これがサンプルね。チェックさせてもらうわね」

 篠崎さんはデスクの上のリングケースを取り上げた。マリッジリングのサンプルを摘み上げ、食い入るようにチェックしている。

「うん、模様はよく再現されているわね。でも、こうして実物を見ると、思ったより派手に感じるわ。ダイヤの配置は、微調整した方がいいかもしれない」

 ハキハキと意見を言って、自分のバッグからクリアファイルを取り出す。中から指輪のデザイン画を引き抜くと、ペンでサラサラとデザインを修正していった。
 その手際の良さに、私を含めたプロジェクトメンバーたちは、ただただ呆然とするばかり。

「次はエンゲージリングね。あなた、ちょっと貸してちょうだい」

 篠崎さんが私に向かって手のひらを差し出す。おずおずと持っていた指輪を渡すと、こちらも隈なくチェックし始めた。

「あら、天使の翼が綺麗ね。ここの仕上がりが一番気になっていたのよ」

 そう嬉しそうに言うと、篠崎さんは指輪を左手の薬指にスッと嵌めた。

「うん、嵌めた時のバランスも良いわね」

 天井の蛍光灯に手をかざして微笑む篠崎さん。真紅のネイルで彩られた長い指に、ダイヤモンドの指輪がよく映えている。
 先に着けられちゃった……なんて、子どもっぽいことを考えちゃダメだよね。篠崎さんは、仕事でやってるんだから。
< 62 / 108 >

この作品をシェア

pagetop