100日後、キミのいない世界で生きていく

また逢う日まで〜side陽菜乃〜

撮り終わった動画を見返してから、ふぅと小さく息をつく。

これでもう、私がみんなに残すものは何もない。


「あら、陽菜乃。もう出るの?たしか待ち合わせは六時って言ってなかった?」


まだ五時半にもなっていないのに靴を履いていると、リビングからやってきたお母さんが不思議そうに首を傾げてきた。


「やることがあるから、もう行かないと」

「そう?気をつけてね」

「うん。…お母さん」

「ん?」


玄関の扉を開けながら、笑顔でお母さんを振り向く。


「行ってきます」


美波と最後に話した階段に腰掛けながら、その時が来るまでじっと耐える。

もしかしたら犯人は少し早めに来るかもしれないから、こうやって待ち伏せをしているけど今のところそれらしき人はいない。


「お嬢さん、上まで荷物運ぶの手伝ってくれないかしら?」

「え?」
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