100日後、キミのいない世界で生きていく
「なわけあるか!」


べしっとサラストの少し長めの黒髪頭を美波に叩かれた奥村眞紘(おくむらまひろ)が、楽しそうにケラケラと笑っている。

クールで物静かな大人っぽい性格と整った顔立ちから一部の女子からはモテているが、眞紘はなにを隠そう美波の彼氏だ。

もうすぐで交際期間は半年になる。

普段は無愛想なところもある眞紘だけど、本当は優しい部分もたくさんあって美波と一緒にいる時なんかは優しい顔ばかりしているから見ているこっちまで幸せな気持ちになる。

私、畑中(はたなか)陽菜乃の永遠の推しカップルだ。


そんな二人とは中学一年生の一番最初の席が近くて、それからずっと三人で過ごしてきた。

二年生に上がってからも奇跡的に三人とも同じクラスで、交流は今も続いている。

去年の冬から二人が付き合い出して私も気を遣うことは増えたけど、それでもやっぱり三人でいる時間は楽しいし離れるなんて選択肢は今までもこれからも存在しない。


「あー!ずりぃ、俺にも写させてくれ!」


スポーツバッグを肩からかけている長谷川颯太(はせがわそうた)が、犬のように元気よく駆け寄ってきた。

今日も校則違反のワックスで髪の毛をツンツンに逆立てている。また学年主任に見つかったら反省文だというのに。


「また二人とも宿題やってないのぉ?いつも美波に見せてもらってちゃ、そのうちダメな人間になるからねー」


両サイドお団子が似合う美少女、木梨若菜(きなしわかな)が必死に宿題を写す私と颯太を憐れむ目で見てきた。
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