100日後、キミのいない世界で生きていく
「本当、あの頃の莉久は口先だけで自分から変わろうとしないクズだったよねー。幸せにするなんて、中学生のくせに言うものじゃないよ」


真冬の公園のベンチに座る物好きな大人なんて私たちくらいで、莉久の鼻も寒さで赤くなっている。


…だけど今の私たちにとってはこのくらいの寒さがちょうどよかった。

そうすれば冷静でいられる気がしたから。


莉久は私があげた缶コーヒーで暖をとりながら、ははと乾いた笑いを出した。

莉久からはきつくて甘い香水の香りがする。


「たしかにな。たくさん陽菜乃のことも傷つけたし、泣かせた。我ながら最低だったと思うよ。もう一度過去に戻れるなら、あの電車に乗れるなら、俺はあの頃に戻りたいよ」

「…その話を、もう一度聞きたくて今日は莉久のことを呼んだの。あの頃はバカみたいだって笑い飛ばしたけど、今はバカみたいなことでも少しでも可能性があるなら私は試してみたいから」


莉久はそんなの無駄だと笑うことはなかった。


きっと同じ気持ちだから。

過去に戻ってやり直したいと思っているのは、私だけではない。


「あの話をした時のことを俺は今でも覚えてるよ。おまえらは全然信じてくれなかったけど。…いや、陽菜乃だけはずっと最初から最後まで信じてくれてたな」


莉久が悲しそうに笑ってから、あの日を思い出すように静かに話し始めた。





「過去に戻れる電車?」
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