不実な自由
私にはとても仲のいい男友達がいた。名前は「ありちゃん」。小さすぎてあだ名しか覚えていない。年中組の頃、新しい子が転入して来た。名前は「一也くん」。その子は、北海道から転入してきた。転入してきた当初、その子はなかなか友達ができなかった。私はそんな「一也くん」と友達になった。二人で仲良く遊んでいる様子を見ていたありちゃんは、寂しそうな顔をしていた。それから少したって、ありちゃんはいなくなってしまった。あとから考えてみれば、それはお父さんの「転勤」だったにちがいない。それっきりありちゃんはどこかへ越してしまった。あとに残された私は一也くんとすぐ仲良くなった。 ある日のこと、幼稚園のお迎えに祖父が来たときだった。一也くんが私と遊びたいといい、初めて一也くんのうちに行った。しかし、私の親は一也くんのうちを知らなかった。夕方になり、帰るのをすっかり忘れた私は無我夢中で建材屋の砂利の山で思い切り遊んでいた。そこへいきなり両親が車でかけつけた。砂利山で遊んでいる子供の声で気付いたらしい。そして私達は一也くんのうちで一休みした。そこへ一也くんの父親が帰ってきて、親は親同士、子供は子供同士話をしていた。