野いちご源氏物語 〇七 紅葉賀(もみじのが)
 こうしてお出かけになれない夜が(たび)重なっていく。()れ聞いた事情を誰かが左大臣(さだいじん)()に伝えたらしく、奥様の女房(にょうぼう)たちは腹を立てていた。
「いったいどういう女性でしょう。失礼ではありませんか」
「どこの誰という(うわさ)もなく、おそばに置いてふざけあっていらっしゃるそうですよ。身分のある人ではありますまい」
「どうせ内裏(だいり)かどこかでちょっと関係をお持ちになった女房でしょう。ごたいそうな扱いだと非難(ひなん)されるのがお嫌で、素性(すじょう)(かく)していらっしゃるのでは。ずいぶん子どもっぽい人だと聞きましたよ」
 (みかど)も源氏の君をお(しか)りになる。
左大臣(さだいじん)が気の毒ではないか。まだそなたが幼かったころから、婿(むこ)として大切に世話をしてきたのだ。そのありがたみが分からぬ年でもないだろうに、どうして薄情(はくじょう)な仕打ちをする」
 源氏の君は恐縮(きょうしゅく)しきったふうでお返事もなさらない。
<左大臣の姫が気に入らないのだろう>
 内心では同情なさりながらも、帝はご納得がいかない。
「これまで(うわ)ついた噂など聞いたことがなかったのに、いつの間にそんなことをしていたのだ」
 とお(なげ)きになる。
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