野いちご源氏物語 〇七 紅葉賀(もみじのが)
いよいよ祝賀会の当日。
(みかど)東宮(とうぐう)様が、上皇(じょうこう)様のお住まいまでお出かけになった。
皇族や貴族の方たちがこぞってお(とも)をなさったわ。
さまざまな楽器が美しい音楽を奏でるなか、皆様がこの日のために練習を積んだ(まい)をご披露(ひろう)なさる。
紅葉(もみじ)がさぁっと風に散った。
青海波(せいがいは)を舞う源氏(げんじ)(きみ)が、輝くようなお姿で舞台に登場なさったわ。
そのお美しさは、もはや恐ろしいほどよ。
お衣装の(かぶと)に紅葉の枝が()してあったのだけれど、その枝までお美しさに恐れをなしたのか、紅葉が散ってしまっていたの。
それにお気づきになった帝は、近くの花壇に咲いていた(きく)を折らせると、紅葉の枝と交換させなさったわ。
美しく色づいた菊を甲に挿して、源氏の君が舞われる。
今日はまた特別に心をこめて舞われるから、この世のものとは思えないほど。
ご覧になった方たちは、涙を流して感動していらっしゃった。

帝はすばらしい舞のご褒美(ほうび)として、源氏の君の(くらい)正三位(しょうさんみ)という高い位にお上げになった。
頭中将(とうのちゅうじょう)様や他の貴族の方たちも、それに引っ張られた形で位を上げていただいたの。
上皇(じょうこう)様の祝賀会は、源氏の君が幸せでおめでたい雰囲気をつくり上げたと言っても過言ではないわ。
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