向日葵の園
だけど、先へ先へと進むに連れて、
分かったことがある。

この有刺鉄線も柵も、上空から全体を見たら
たぶんきれいな直線上には設置されていない。

どこかでズレ始めたのだろうか。
スタート地点よりも私の体と向日葵が近くなっていくような気がした。

そして近づくほどに感じる違和感。
違和感、というかはっきりと肉眼で視認できる。

太陽を向いて咲き誇る向日葵。
その所々で、俯くように下を向いている向日葵と、
花びら全体を包む紙袋。

農家の特集番組で見たことがある。
果物が収穫時期になるまで被せておく袋を連想させる。

導かれるように、その袋に手を伸ばしかけた時だった。

ポケットの中でスマホが震えているのを感じて、
下ろした手でそのままスマホを取り出した。

「憂さん…?」

スマホのディスプレイに表示される、憂さんのフルネーム。

「応答」の緑色のマークをタップして、
電話に出た。
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