向日葵の園
ソファに都を座らせて、その隣には綴が座った。

向かい側に私、お姉ちゃん、憂さんで並んで座る。

当然だけど、綴も都もさっき以上に治療をした形跡は無い。
あんな短時間で町まで下りることは不可能だし。

「憂さん…町へは行かないんですか?」

「…行けないんだ」

「行けない…ってどういうこと?憂…?」

「…橋を渡れないの」

綴が震える声でポツリと言った。

そのたった一言、たった一瞬で、全員の頭の中に
「山奥に閉じ込められた」と強く意識させるには十分だった。

「綴、橋を渡れないって…」

はっきりと憶えている。
この別荘にやってくる時に渡った橋を。

橋の下には川が流れていて、
その時は激流では無かったけれど
台風や、災害が起きた場合は轟々と氾濫することもあるらしい。

しっかりと太いロープで架けられている橋は
車一台が通り抜ける分には強度に問題は無いと憂さんは言ったけれど
私と綴は怖がって、スリルが大好きなお姉ちゃんと都は楽しそうだった。

橋の長さは十メートルくらいで、
橋から川までの距離は、綴達が落下してしまった崖よりも遥かに高い。

都が足を怪我していなかったとしても、
人の足で飛び越えることは不可能だ。
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