Simple-Lover
◇
年末年始は。
羽純さんが突撃訪問してくるという、イレギュラーなことはあったけれど、お母さんのファインプレーもあって、その後羽純さんから接触はなく、ヒロにいが話をしてくれたんだと感じながら安心して過ごせた。
おかげで受験勉強により集中できて。
1月の模試では、相央大学もB判定まで出るようになった。
「おー。頑張ってるね。」
「はい!おかげさまで絶好調です!」
ムキっと力こぶを作るポーズを見せた私に、クッと西山先生が笑う。
判定用紙を机の上に置くと、コーヒーを一口飲んだ。
「…さて、じゃあ最後の追い込み、やりますか。」
「はい!」
…絶対に受かりたい。
西山先生がここまでしてくれたんだから。
お父さんやお母さんが、頑張って働いて、その環境を作ってくれているんだから。
そして…ヒロにいが守ってくれているんだから。
なつみやさあちゃん、早川や若菜ちゃん、舞さん…の笑顔もよぎる。
皆、それぞれ頑張ってる事があって。でも応援して見守ってくれている。
だから、私は最後までちゃんと頑張れる、絶対に。背中を押してくれてる人達がいるから。
色々な人の私への愛情を感じながら過ごせた受験勉強の最終段階は。
「おかえり。今日もお疲れさん。」
「…っ!」
ヒロにいが車で迎えに来てくれる事でさらにやる気がグレードアップ。
助手席を開けた時の運転席で少し小首を傾げて微笑む様と言ったらもう。
初めて目の当たりにした時は、そのカッコ良さに息を飲み過ぎて……
………咽せた。
あまりにも私がヒロにぃを見ていたら、「運転間違えるから」と笑う。信号が赤になった瞬間に体を寄せて来て………ふわりとキス。
「よ、よそ見…厳禁…」
「そ?」
わ、私に…こんな幸福たっぷりな瞬間が訪れるなんて!しかもヒロにいと!
いや、ヒロにい以外とはあり得ないけど!
合宿に羽純さんと行ったと聞いた時はショックだったけど、運転免許万歳!って本当に思った。
その後も冬の寒さは日を追うごとに深くなって行ったけれど、ヒロにいや西山先生、お父さんやお母さんの協力もあって、心の中がポカポカとしたまま過ごせた1月を過ぎて。
いよいよ、相央大学の試験当日を迎えた。
「行ってらっしゃい。」
「うん、ヒロにぃ、送ってくれてありがとう!行ってきます!」
「んじゃ…俺、図書館に居るから。」
「えー…平気なのに。帰りは一人で帰るよ。」
「俺がヤダ。つか、帰りにヒナを口実に飯食いたい。」
「何それ。」
「うまい、ラーメン屋見つけたんだよ。折角電車で来たんだし、帰りに寄りたい。」
「ラーメン?!行きたい!絶対試験頑張る!」
「…俺が待ってることにモチベーション上げろや。」
クッと笑い、手のひらをポンと一度私の頭に乗せると「じゃあ、後で」と去っていくヒロにぃ。
その背中を見送って、私も教室へと踏み出した。
…よし。頑張る。
絶対に…受かる。
気合いを入れて、試験会場の教室に行くと、ジャケットを着てメガネをかけた西山先生の姿。
あ…そっか。今日の試験の補助を頼まれていたって言ってたな…。
目が合うと、ニコッと笑って口パクでこっそり「頑張れ」と言って軽く力こぶを作る西山先生。
それに、私も笑顔で力こぶを作って見せた。
おかげで、落ち着いて試験を受けられた…のは良かったけれど。
「…めっちゃ難しかった。」
「あー…試験の傾向は当たってたけど、内容がさらにディープになってたってことか…まあ、とにかくお疲れ。」
「はい…ありがとうございます。」
ラーメン屋さんのカウンター席で、項垂れて机に突っ伏した陽菜を隣で西山先生が苦笑いしながら、水を飲んだ。
「…つか、何で西山さんが居るんですかね。」
私を挟んで左隣にヒロにぃ、右隣に西山さんという並びでいる今。私と西山さんのやり取りを見ながら、カウンターに肩肘をついてそこに頬を置いて聞いていたヒロにぃが目を細めて不満げに口を開いた。
「え?ダメ?ほら、丁度会場整理が交代で終わったからさ。」
西山さんが楽しそうにヒロにぃの方に体を乗り出して、そう聞く。
「や…まあ…ダメ…って事はないですけど…」
「そ?だったら良かった。」
…珍しくヒロにいがたじたじしてる感じ。
貴重かも。
私が裕紀の顔を見るとバツの悪そうにふうと息を出して、ポンと私の頭に手を置く。
「…とりあえずお疲れ様。えっと後…2校位だっけ、受験。」
「そう!第二希望の望星大学はもう終わって結果待ち…ってそうだ。今日結果がわかる日だ。」
二人に見守られながら、スマホで望星大学の受験合否を検索。
あ……。
「おっ」
「おおっ」
スマホに現れた「合格」の文字。
や、やった…。
声にならない歓喜でヒロにいと西山先生を互いに見たらら、ニコッと笑ってくれる。
「と、とりあえずお母さんとお父さんにメッセージ打っておく。」
「うん、そうしてあげた方がいいね。つか、俺もうちの両親に送っていい?すげー気になって昨日あんまり寝てないみたいだから。」
「え…おじさんとおばさん…。」
「まあ、ヒナが好きすぎるからね、あの二人。俺の時なんて、相央大学受験日、寝坊したのにさ。」
ハハっと西山先生が笑ったら、ちょうど3人分のラーメンが目の前に現れた。
「とりあえず、メッセージ送ったら、ラーメンで勝利の美酒と行きますか。おめでとう、山本さん。とりあえずめでたく春から大学生だね。」
「は、はい!嬉しいです!」
「相央大学に入れるかはわかんないけど、法学部に入るって所は、達成できること確定だもんね。」
ヒロにぃが、そういうと西山先生もそれにうなづいて、微笑む。
「望星大学も合ってると思うよ。あそこも相当法学部はスパルタだから。司法試験の合格率もいいしね。
それに、山本さんがオープンキャンパスで受けた公開授業の先生、来年から望星大学の教授になるみたいだからさ。」
「えっ?!そうなんですか!やった!あの先生の授業また受けたいって思ったんです!」
「…や、まだ相央大学の合否。」
苦笑いのヒロにぃが、スープを一口飲んで、うん、美味い。と笑顔。
私もそれに習って心軽く麺を頬張った。
…色々あったけれど、頑張って良かった。
『受験は過酷』と西山先生が言っていたけれど、本当にそうだったな。勉強自体もそうなのかもしれないけれど、人間どうしても気持ちの揺れなく1年間を過ごすなんてあり得ない。
色々な葛藤があって、それにプラスして大変な受験勉強をこなさなければならない。
本当に…大変だった。
頑張ったよ、私。
ちゃんと自分を褒めてあげなきゃ。
「ラーメン替え玉!大盛りで!」
「ヒナ…替え玉に大盛りはないから。」
「山本さん、相変わらず面白いなー。」
呆れるヒロにぃとニコニコとしている西山先生に挟まれながら、美味しいラーメンを心から堪能したその日。
数日後に来た、相央大学の判定は…不合格だった。
残念だという気持ちは、とても強かったけれど。
自分の進路について真剣に考え出したのは、高校2年の春休みで。
それまで平穏無事に何も考えずに生活をしてきたのだから、仕方ないと思う自分も居て。
そんな反省点も踏まえて、高い壁に挑んだ自分は無駄じゃなかったって思えた。
.
卒業式の日は、朝からどこまでも晴れ渡る空。
自分の心の中みたいに、すっきりとしていた。
「ヒナ〜!」
「お互いおめでとう!」
「なつみ!さあちゃん!」
卒業式も教室でも号泣して、全員瞼が腫れて目の周りが真っ赤な三人。そんなお互いを見合わせて中庭でまたぎゅーっとして笑いあった。
「二人とも、志望校合格だもんね!」
「ヒナだって、望星大学法学部でしょ?凄いよ!」
「大学行っても会おうね!」
この二人がいたから、高校生活が本当に楽しかったし、心強いこともたくさんあった。ヒロにいの事も…たくさん聞いてもらったし、時には冷静に話をしてくれたもんね。
「ずっと好き!」
「ヒナ〜!可愛い!」
「それな!」
「…わかったから、とりあえず道の真ん中から退けば?」
盛り上がってたら、呆れた声が聞こえてくる。
「なんだ、早川!邪魔しないでよ…って何それ!」
振り向いて見た、早川は、ネクタイを外して、ジャケットのボタンも校章も…全部なくなり、どこかボロっとしてる。
「…追い剥ぎ?」
「お前、もっと良い方に考えろや。いく先々で、『なんかください』って言われて取られたんだよ。」
私の言い草にふうと少し後頭部をかいてみせた早川はふっと頬を緩める。
「まあ…色々と良かったな。」
「うん、早川も。色々ありがとう…って、若菜ちゃんは?平気なの?」
「あーうん。図書委員を来年はやらないし、それで様子を見るって。まあでも、大丈夫でしょ。来年は授業数も減るし…そしたら高校に居る時間減るだろうから。若菜もなるべく接触しないって決めて。ともみちゃんもだし…何人か気にかけてくれる人も居るみたいだから。」
「そっか…。まあ、様子見るしかないってことだね。」
「ついでにちょっと、”オハナシ”をしてきたしね、先生には。」
「お、“オハナシ”って…怖いって早川!」
「そう?ただ、ちょーっと『若菜に手ェ出してみろ、絶対許さねえ』って真剣に言ってみただけだけど。」
「サラッと言うセリフか?!それ!」
「イケメン気取り!」
「お前ら…マジで最後まで散々だな、俺のこと。」
なつみとさあちゃんがカラカラと笑いながらからかうと、苦笑いしながら、「まあでも楽しかったわ。またな」と去っていく早川。
「早川…マジで若菜ちゃん好きだよね。ありゃ大変だ、若菜ちゃん。」
「本人に自覚があんまりなさそうなところも含めてね。あいつ、大学行ってもモテそうだけど、眼中なさそうだねーそっちは」
…早川は、指定校推薦で大学に入れたから、高校3年でもバイトが出来ていた。
ちゃんと皆んな、考えて高校生活を送ってたんだな…。私って本当に自分の置かれてる環境に甘えてこれからのこととかちゃんと考えていなかった。
不意に見上げた空。
そこにヒロにぃの笑顔が浮かぶ。
帰ろう、ヒロにいの所に。
……とは思ったけれどまずはお世話になった西山先生にご挨拶をしないとと寄った塾。
西山先生に『いますか?』とメッセージを送ったら、「待ってるよ」と連絡をくれた。
塾長の加藤先生に迎えられて、他の高校の子達も来ていて、皆んなで別れを惜しみながらまた泣いて。
盛り上がっている最中抜け出して行った自習室。
まだ開放時間ではないから、誰もいなくて、西山先生だけがそこで待っていた。
「山本さん、卒業おめでとう。それから…4月から大学生になるのも。」
「はい。ありがとうございます!まあ…相央大学に入れなくて残念だなっていうのがありますが…」
そう言って苦笑いをしたら、西山先生は、ふわりと笑う。
「うん、俺もね、それは物凄く残念に思ってる。」
「す、すみません…あんなに良くしていただいたのに…」
「や?そうじゃなくてね?」
小首を傾げた陽菜に、「はい、卒業祝い」と小さな細長い箱を取り出す。
それを私が受け取るのを見てから、ポンと私の頭にその厚めの大きな手のひらを置いた。
「…もし、相央大学に受かって俺の後輩になったら、全力で口説こうと思ってたからさ。」
驚き目を見開いた私に、小首を傾げて微笑む西山先生。
「だって、これで晴れて俺はお役御免でしょ?塾講師でも家庭教師でもなくなったんだから。だったら、どうしようと自由じゃん。」
「そ、それは………」
「うん。」
「……ごめんなさい。」
私の答えに、ははっと今度は楽しげに笑う。
「やばっ!まだ口説き始めてないのにフラレた!」
「や、あのっ!だって!」
「だよねー。山本さんには、イケメン彼氏がいるから。」
私から離れ、んーっと伸びをする西山先生。手足をこうして伸ばしている所をあらためてみると、本当にそれがとても長いと実感する。
顔も小さいし…スタイル良いよね、西山先生って。
そんな事を考えながら、また口を開いた。
「あ、あの…たくさんお世話になったので、お礼をしようと、カフェレストランを予約してたのですが…」
「えっ?!マジで?!嬉しい!」
「…お誘いしにくくなりました。マジで。」
「何それ。俺、2度フラレたみたいになったけど。」
「えっと…だ、だって…」
私のしどろもどろな反応に、ククッと笑うと両ポケットに手を突っ込んでまた小首を傾げて私を見る西山先生。
「…そのレストランは、相沢くんと行きなよ。受験期一番の立役者は彼でしょ?」
「それは…」
「俺はそう思うよ。山本さんの気持ちを支えていた人はたくさんいるけれど、相沢くんみたいに真っ直ぐに山本さんを想う人、中々貴重だと思う。ほら、俺は家庭教師として謝礼をたくさんいただいていたわけだし。彼は、無償であれだけ尽くしてるんだから。」
そう言われてしまうと…な…。
どう考えても、通常の家庭教師よりもずっと働いてくれた気がするんだけど…。
「…もし、山本さんが俺のこと覚えていてくれるなら、いつか法曹界のどこかで出会った時に味方になってくれたら嬉しいかも。」
「も、もちろん!というか…今度は、法に携わる人間として、西山先生にお会いしたいです!」
「おっ!じゃあ、口説くのはその時まで待つことにする。」
「そ、それは…勘弁願います。」
「3度フラレた!」
あははと笑うと、「またね」と去っていく西山先生。
その姿が見えなくなっても、そのまま何となく話をした余韻に浸る。
ありがとう…ございます。
西山先生は、私の努力だ、ヒロにいは寄り添ってくれていたって言うけれど。
それが出来たのは、紛れもなく西山先生のおかげだから。
もし…もしもいつか、私がどこかで西山先生とまた何かで会うことがあったら、その時は…私が今度は西山先生の役に立ちたい。
そのためにも、これから頑張って勉強していきます。
再び塾の教室に戻って、もう一度塾長初め皆と話をしてから出たビル。
入り口に立って見上げた空は、やっぱりどこまでも青かった。
…今度こそ、帰ろう。
軽やかな足取りで一歩を出すと、スマホが震える。
『今どこ?迎えに行こうかと思ってたんだけど。卒業祝いに、ドライブでも行く?』
卒業式の後…彼氏が車で迎えに来て、そのままドライブ。
わ、私にこんな贅沢な日が来るなんて!…って受験直前にも思ってた気がする。
『立役者は相沢君』
不意に西山先生の言葉を思い出した。
…そう、だよね。いつだって、こうやってヒロにいは私を優先して気にかけてくれて。
でも、それが申し訳ないって思ってた。甘えだって…。
スマホをタップして、返信。
『ありがとう!ドライブ行きたい!』
ヒロにいはずっと私と居たいって言ってくれる。だから、それを信じて、受け入れるってことが私のヒロにいに対する誠意なのかなと思う。
そんなヒロにいへの感謝の気持ちに満たされて、塾近くで合流して、車に乗って。
ヒロにいがドライブで連れて行ってくれた所は、大きな桜の木のある丘だった。
「ソメイヨシノはまだだけど、ここは早咲きの桜が咲いてるからね。結構穴場スポットだったりするみたいよ」
確かに、人はまばらで、ぽつりぽつりと日向ぼっこを楽しんでいる程度の丘。
公園が併設されているらしく、遠くから子供の声はしているけれど、丘には子供の姿もほとんどなくて静かだった。
木の下まで二人で来て、その綺麗さに見惚れ見上げた私の隣でヒロにいが穏やかに微笑む。
「ヒナ、卒業おめでと。」
「うん!ありがとう!春から大学生だし!」
そう言ったら、手を絡めて繋がれて、少し引き寄せられる。
「…浮気すんなよ。」
「しないし。ヒロにいこそ、ちょっかい出したくなる人居ても、デレデレしない。」
「しないし。」
ふっとお互い、自嘲気味に笑ってから頭をもたれ合う。
吹いてくる風が、春を感じて柔らかくて、もっと目を細めた。
「…ヒロにい。」
「んー?」
「私ね、高校生も今日までだけど、ヒロにいも今日卒業しようかと思って。」
言った途端、ふっと頭の重みが肩からなくなる。
笑顔が消えてそのブラウンの瞳を揺らすヒロにいの眉間に少し皺が寄った。
別に…大した話でもないんだけどな。
特に言わなくても良いのかもしれないことだし。
けれど、区切りとして私の中の宣言として声に出しておいた方が良いかなって思ったんだよね…。
お互い絡めあっている指に、グッと少し力を込めると、少しヒロにいを引き寄せて背伸びをして自ら唇同士をつけた。
「…“幼馴染”は卒業する!私は“ヒロ”の彼女、だから。」
私の言動に、ヒロにいの整った二重の目が見開き、ブラウンの綺麗な瞳がより煌めきを放つ。
真っ直ぐに近い距離で見つめられて、ドキドキと心臓が忙しなく動き、緊張が走った。
…けれど。
次の瞬間、その目が細くなり、目尻に目一杯皺が寄る。少し下を向くヒロにいは完全に笑ってた。
「…くっ!」
「なっ!何で?!どうして笑うの?!」
「や、だって…うん、そうだよね、卒業!」
「はっ?!バカだと思ってるでしょ!ヒロにい嫌い!」
「あれ?戻った?幼馴染に。」
離れようとした私を引き寄せて、つないでいない反対側の腕で私を包み込むヒロにい。
そのままおでこ同士をくっつけた。
「…ヒナ。」
「な、何…?」
「好き。」
耳元にかかる吐息と共に、発せられた掠れ声は、気持ちを掴まれるには十分で。離れようとするのをやめて大人しくその大好きな腕の中に収まる。
「ヒナ、もっかい聞きたい。ヒナの宣言。」
「…もう言わない。」
「言ってよ。」
「ヤダ。」
「あーそう。まあいいや。どうせ櫻燈庵行ったら、いくらでも聞けるから。」
「っ!ずるい!言わないし!」
「ダメ、言うの、露天風呂で。」
「入らない!」
「ヤダ。入る。」
終わりのない応酬を繰り返す私達の元に、また柔らかくどこか暖かさを感じる風が吹いて、桜の花びらが舞い落ちてくる。
ありがとう…ヒロにい。
私をずっと大事にしてくれて、好きでいてくれて。
この愛情が当たり前じゃないって、今はきちんとわかるから。
「櫻燈庵まで待てなくなってきた。ヒナ、明日、泊まりに行くよ。」
「な、何で…」
「だって、西山先生から卒業祝いも頂いちゃって、ついでに口説かれて来たんでしょ?」
「っ!ど、どうしてそれを…」
「あ、図星?」
「っ!カマかけたの?!ヒロにい嫌い!」
「誰だっけ、ヒロにいって。俺は、もう違うし。」
「っ!やだ!」
「ダメ。泊まり決定。もうね、取ってるから、予約。横浜桜木町のクイーンズタワーのとこ。」
「えっ?!泊まりたい!」
「でしょ?俺って良くできた彼氏!」
これから先も、きっと、色々あるだろうけど…“相沢裕紀”と居るのなら、大丈夫。
だから、私もこの関係を大事にして、ずっと一緒に居れるように頑張るからね。
(Simple lover fin.)
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