妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~
「手を組むって? そんなのできない」
私はキッと竜くんをにらみつけた。
竜くんはキョトンとした顔で首をかしげる。
「なぜだ? 俺らは普通の人間とは違うんだ。普通の人間とは一緒に暮らせない。でも俺と朱里ちゃんの力があれば一緒にこの世界を妖怪が支配する世界にできる。そいつを消してて復讐を果たし、一緒に妖怪のはびこる世をつくろう。朱里ちゃんだって、はみ出し者は嫌だろう? だったら妖怪のほうを『普通』にすればいいんだ」
大きく手を広げ、興奮した口調で語る竜くん。
私は唇を噛みしめ、下を向いた。
「別に……はみ出し者だっていいじゃない。普通じゃなくていい」
私が答えると、竜くんはあからさまに不機嫌な顔をする。
「なんでだよ」
私は竜くんの顔をまっすぐに見つめて答えた。
「だって……凪季のいないこの世界なんて意味がないもん」
私は、凪季に出会って変わった。
普通にしなきゃって、ビクビク怯えるのはもうやめたんだ。
だから――。
私はまっ直ぐに竜くんを見すえて言った。
「――私は、凪季を守る!」
私の答えに、竜くんは低く舌打ちした。
「ちっ、俺の邪魔をするんならしょうがない。朱里ちゃんには少しの間どいてもらうとするか」
竜くんが右手を振ると、黒い大蛇がこちらへと向かってくる。
私は印を結んで唱えた。
「狐火!」
ゴオッ。
小さな火が黒い蛇を襲う。
だけど――。
「無駄だよ」
竜くんが手を振ると、瞬く間に火はかき消えてしまった。
「この蛇は水をつかさどる妖怪なんだ。見たところ君は火をあつかえるようだけど――いくら火をつけても水をかければ消えちゃうから意味ないよ」
クスクス笑う竜くん。
なるほど、火と水。相性は最悪ってわけね。