妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~
 私は黙って右手を前に出した。

 目の前に赤く光る星形の魔法陣――五芒星(ごぼうせい)が現れる。

 蛇はそれを見るとピタリと動きを止めた。

「何っ!?」

 目をひんむいて驚く竜くん。

「確かに竜くんの言う通り、火は水で消える。でも強い火の前では逆に水は蒸発してしまうの――相性なんてもの、圧倒的な力の差があれば関係ないんだ」

 私は静かに右手に力をこめた。

「――散」

 私が唱えたとたん、黒い蛇がボロボロと崩れ落ちていく。

「な……何で!?」

「これで終わりだよ」

 私は静かに告げると、竜くんの額に人差し指を置いた。

「――封印!」

 真っ赤な光が竜くんを包む。

 鱗がびっしりと生えていた竜くんの腕は人間の白い手に戻り、蛇のようだった瞳も元のこげ茶色の瞳に戻った。

「竜くんの中にいた蛇の妖魔を封印した。これでもう、竜くんは蛇の力を使えないはずだよ」

 私の言葉に、竜くんは膝から崩れ落ちた。

「あれ? 俺は……どうしてここに?」

 わけが分からないという顔の竜くん。

 どうやら操られていた間の記憶がないみたい。

 竜くんには、あとで事情を説明しないと。

 私はふう、と小さい息をはいた。
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