妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~

 私はくるりと凪季のほうへ振り返った。

「終わったよ」

 私が言うと、凪季は少し照れたように微笑んだ。

「ありがとう、朱里。また助けられたな」

「ううん気にしないで。それより、びっくりしたでしょ、この姿」

 私は長く伸びた自分の髪と、狐の耳を指さした。

「びっくりしたけど――すごく綺麗だ」

 凪季は私の髪にそっと触れ口づけた。

 凪季の指の先でサラサラと髪がこぼれ落ちる

「綺麗? 本当?」

「ああ。この長い髪も、赤い瞳も、しっぽも、この耳も」

 今度は私の耳をそっと撫でる凪季。

「ふわふわだな」

「もう、くすぐったいよ」

 凪季は私の長い前髪をかき分け、私の目をじっと見つめた。

「――朱里、好きだ」

「凪季」

「朱里は俺のことを守る対象としか思っていなかったかもしれないけど、俺は初めから朱里が好きだった。だから――もしよければ、もう一度俺と付き合ってくれないか」

「うん、私も凪季が好き」

 目から涙がボロボロと流れ落ちる。

「凪季ともう、離れたくない」

 そんな私を、凪季はぎゅっと抱きしめた。

「相変わらず泣き虫だな、お前は」

 私は凪季の広い背中に腕を回し、強く抱きしめ返した。

「……うん」

 もう離れないよ。

 ずっと。

 ずっと――。

 
< 106 / 112 >

この作品をシェア

pagetop