妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~
「見て見て、蒼木先輩よ」
「相変わらずカッコいい!」

 蒼木先輩が車を降りるなり、黄色い歓声に包まれる。

 ひゃあ、先輩、相変わらず人気者だなあ。

 私が車の中でポカンとしていると、先輩は私の方へ手を差し出した。

「何してんの。早く降りたら」

「は、はいっ」

 正直、こんなに大勢の人が見てる前で車を降りたくない。

 でも降りないと学校に行けないからしょうがないっ……。

 私は意を決して先輩の手を取ると、車から降りて校門へと向かった。

 先輩の姿にはしゃいでいた女子たちは、私の姿を見るなり目の色を変えた。

「隣にいるあの子は誰?」
「まさか……彼女!?」
「えー、ウソ。あんな地味な子が!?」

 うう、蒼木先輩ファンたちの視線が痛い……。

 分かっていたけど……蒼木先輩の彼女って、大変だぁ……。

 私は身を縮こまらせながら教室へと向かった。
 
 ***

「おはよう朱里! 蒼木先輩と付き合い始めたって本当?」

 教室に着くなり、心菜ちゃんが声をかけてくる。

 どうやら私と蒼木先輩のことが、もうクラス中のウワサになってるみたい。

 さすが蒼木先輩。有名人は違うなあ……。

「……うん。実は本当なの」

 私は小声でこそこそ返事をしたんだけど、心菜ちゃんは教室中に響き渡るほど大きな声で叫んだ。

「えーーっ! 本当に付き合ってるの!?」

 ちょ……ちょっと、心菜ちゃんったら声が大きいよ!
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