妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~
22.消えた凪季
「凪季っ……凪季ーっ!」
私は薄暗くなり始めた廊下を叫びながら走った。
凪季、一体どこに行ったの?
私が息を切らしながら校舎の中を走っていると、ひとけのない廊下の向こうから急に黒い影が現れた。
ドキリ。
私が身構えていると、そこに現れたのは竜くんだった。
な、なんだ……。
「竜くん!」
私は竜くんに声をかけた。
「おう、朱里ちゃん」
竜くんが右手を上げる。
だけどその表情は、ちょうど西日で逆光になっていてよく見えない。
私は竜くん必死でに尋ねた。
「竜くん、凪季見なかった?」
私が言うと、竜くんはあからさまに嫌そうな顔をした。
「なんだよ、凪季、凪季って。朱里はもうあいつと別れたんだろ?」
「そ、そうだけど、やっぱり心配だもん。なんだか嫌な予感がして――」
私がそう言った途端、竜くんはグッと私の腕をつかんだ。
指に力をこめられ、私は小さく声を上げた。
「痛っ……」
「いいじゃん、忘れろよ、あんな奴」
ぞっとするほど低い声の竜くん。
「竜……くん?」
私の腕をつかむ手がひんやりと冷たい。
私はこの時初めて、竜くんの腕にまるで蛇の鱗みたいなあざがあるのに気付いた。
ゾクリと背中に悪寒が走る。
私は無意識のうちに、制服越しに肩にある蝶のあざに手をやった。
これって、もしかして――!?
「あいつらのせいで、俺たちは住み家を奪われた。復讐してやろうぜ」
竜くんの目が妖しく金色に光る。
まるで爬虫類みたい。
それに……『俺たち』って?
「竜くん……もしかして……」
まさか竜くん、何かに憑かれてるの!?