妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~
「ふふ、気づいたようだな」

 竜くんの瞳孔がすうっと蛇のように細くなる。

「俺とあんたは同じだ」

 口の端からチロチロと長い舌をのぞかせ、竜くんが私を指さす。

「同じ……?」

「同じ妖怪の血を引く者ってことだ」

 竜くんがきっぱりと言ってのける。

 同じ……妖怪の血。

 つまり竜くんも、妖怪の子孫なんだ。

「もしかして、凪季を襲ったのは竜くん?」

 私の問いに、竜くんは低く笑った。

「ああ、そうだよ。今ごろ気づいたのか?」

「あの落書きも、用水路や公園で凪季を襲ったのも、みんな竜くんの仕業だったの!?」

「そうさ。もともと通っていた公立の中学からこの学校にわざわざ転校してきたのもそのためだ」

 クククと腹をよじらせて笑い転げる竜くん。

「いつも襲おうとすると邪魔が入ってたけど、今回は一人きりになってくれて助かったよ」

 私の胸に悔しさが胸にこみあげてくる。

 私のせいだ。

 私が凪季のそばにいなかったから――。

 私は必死で竜くんの腕を引っ張った。

「凪季は今どこにいるの!?」

 だけど竜くんはうす笑いを浮かべたままだ。

「助けようと思っても無駄だよ。水場での戦いにはこちらに分がある。あいつのことは忘れるんだな」
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